読書感想文コンクール [出来事]

 先日、地域の読書感想文コンクールの審査会に行ってきました。私の勤務する地域の小中学校からの応募作品を審査し、県コンクールに送るための会です。この作品は地域の感想文集に載せられます。そのほかに県コンクールには出品しませんが、それに準ずる作品として地域内の感想文集に載せるための作品も選びます。

 「読書感想文なんて」と思っていらっしゃる方も多いと思います。

 現状を見るとその通りだと思います。

 何の指導もせず、夏休みの宿題で3枚書いて来い、なんて言っているようでは「読書感想文は読書嫌いにさせる」という意見に賛成せざるを得ません。

 私は勤務する学校では、「何の指導もせずに宿題にしないでください。」と言っています。「授業の中で書かせて、可能性のある児童に修正個所の指導をしたうえで書き直しを宿題にするようにしてください。」と言っています。そのため、勤務している間は宿題になることはあまりありません。(各教師の判断ですので、強制はできません。」

 作文なんて全員が得意なわけがありません。ましてや読書感想文となるとなおさらです。読書の感想なんて読み終わって「ああ面白かった。」で十分なのです。それを1200字もの文章にするということ自体大変なことです。宿題にして誰でも彼でも1200字書けという教師のほうが間違っていると思います。

 それなのに夏休みの宿題にするのは、コンクールがあり、クラスからの出品を求められるからです。担任が意欲を持っていないので、「宿題に」ということになるのでしょう。

 私はどうしているかというと、夏休み前の国語の時間を工面して(大概このあたりに読書に関する単元が設定されています)読み聞かせをし、所々で立ち止まりながら感じたことをメモさせます。「○○が△△したところで私はこう思いました。だからこうしたらいいと思います。こんな気持ちになりました。」というようなメモです。それも強制はしません。書けなければ書けないでいいのです。そうしてからメモをまとめて作文にさせます。(書けない子は書けなくていいのです。)その中から、モノになりそうなものを選んで、子供と一緒に内容を深め、書き方を考え、夏休み中の書きなおしてくるようにします。もちろん子供が「やる」と言うことが前提ですが。

 それによって子供の感想文嫌い、読書嫌いは防げると思います。

 子供たちは何かというと作文を書かされます。遠足が終わって、社会科見学が終わって、運動会が終わって、演劇鑑賞会が終わって、音楽鑑賞買いが終わって、地域の皆さんにお礼を、敬老の会に等々。

 書くことが得意な子供ばかりではありません。そのことも考えてほしいと思います。もちろん運動が苦手な子に対しても、人前で話すことが苦手な子に対しても、絵が苦手、習字が苦手、努力させることは必要ですが強制させることは必要ではないと思ます。
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あにどる

しのさん

全くその通りだと思います。
しのさんの考えは、海外の教育方針に似ています。

子供も、何かあるたびに感想文を書かされるのでは
楽しかった体験も最終的には難しいものになるんですねぇ。

スポーツ選手のように結果だけで判断されるのは
子供もお気の毒です。

ゆとりと言うよりも、おおらかな教育環境になるように祈っています。

今夜は寒いくらいです。
風邪をひかないように暖かくしてくださいな。


by あにどる (2011-10-03 20:09) 

しのさんの読書日記

 あにどるさん、ありがとうございます。

 実際にクラスを持っているとなかなか思うようにいかないこともあります。担任の得手不得手もありますし、無理強いはできません。

 でも最近、読書について力を入れる傾向が強くなり、少しは先生方にも影響があるかなと思っています。

 このところ朝晩冷え込んで、今日などは上着を着て出勤しました。あにドルさんも無理せずに頑張ってください。
by しのさんの読書日記 (2011-10-04 17:34) 

本屋のオバさん

しのせんせいのお仕事も大変ですね。
そういえば8月末に学校へ行った時、図工の研修会を図書室でやっていて教科書搬入の傍ら聞いていたのですがしのせんせいがおっしゃる「読書感想文」の考え方と同じようなことを行っていました。

作品評価の難しさ、子どもたちの内面が探る教師側の丁寧な姿勢が大事だとか?

押しつけの感想文は、いやですね。
いつも8月末ぐらいにやってくるお子さんのセリフが面白いです。
「薄くてすぐ読める本がいいんだけど・・・・」読みたいより早く読んで書ける本だとか???

無理に読んで書くことないのにといつも思います。
本がかわいそうですもの・・・・。
by 本屋のオバさん (2011-10-04 21:47) 

しのさんの読書日記

 おばさんのおっしゃる通りです。図工のことはよくわかりませんが、絵から子供の心理を分析する方法もあります。何回か研修を受けましたが、やはりその道のプロでないとよくわかりません。

 感想文も「書け」と言われて書くものではないと思います。その本に本当に感動すれば誰に言われなくてもその内容や感じたことを話したくなるものです。

 私たちの読書会もそんなものではないでしょうか。書評家と言われる人たちも感動(あるいは本から受けるインパクト)なくして書評は書けないでしょう。

 教師が「やれ」と言われてやっている限り現状は変わらないと思います。
by しのさんの読書日記 (2011-10-05 17:35) 

ぶんぶん

こんばんは♪

読書感想文・・・
難しいところですね、感動、感想、伝達・・・
得手、不得手・・・
確かにそうですが・・・

ただ、「難しい」だけでは、社会に出て苦労するのでは。
その辺の加減が難しいと思いますが、「教師」としての職業は
健やかな社会生活を送れるよう指導するのが第一かと思い
ます。
「嫌だから、やらない」では、済まされない年代にいずれなります。
仕事の「報告書」「企画書」「商品説明」などなど・・・
小さいうちからの訓練が今に活きていると考えいます。

小学3年生の時の国語の先生に感謝しています。
国語の辞書を買いに一人でバスに乗って駅の本屋さんに行った
時の事です。
夕方で、心細くて、辞書ってなんだ?という思いを抱いてバスに
乗り込みました。
「〇〇君、どこ行くの?」と声を掛けられました。
担当の先生でした。
事情を話すと、本屋さんまで付いて来てくれて、辞書も一緒に
選んでくれました。
そんな先生は国語の時間に「人に考えを伝える事の大事さ」を
いつも言っていました。
その思いは今も私の拠り所となっています。

感想文、お礼状、挨拶などは、小さいうちから訓練した方が
いずれ自分のためになるような気がします。
それぞれの子供たちの能力の引き上げも大事ですが、「一般
教養」になるのかな。
そんな力も備えて行く学校教育であって欲しいと思います。

単なる私見です、コンクール用の感想文の強要はどうかと思い
ますが、自分の感じた事は伝達しないと自分も成長しないのでは。
PCばかりで、文字を書く能力も落ちていると聞きます。
感想文は必要なのではありませんか・・・

では、又♪


by ぶんぶん (2011-10-09 19:50) 

しのさんの読書日記

ぶんぶんさんありがとうございます。

 感想や、思ったこと、感じたことを他の人に伝える。そういう意味では文章が書けることは大事なことだと思います。

 自分の思いを他人に伝える、実社会に出て大事な能力の一つでしょう。そういう意味で感想を書く力を養うことは大事だと思います。

 でも、そのために何の指導もせずに「書いて来い」では何も向上しないと思います。

 だから、「授業の中で指導したうえで書き直しの宿題を」と呼びかけているのです。

 同じ学年の児童でも、たくさんの文章を書けることまったくかけない子がいます。たくさんかけてもその質も大事ですが。そんな児童に一律に宿題とするのは教師の怠慢としか言えません。

 また、感想や心情を表す文章と、報告書企画書などとは指導の仕方も違ってくると思います。

 あいさつ文などもまた別のものだと思います。

 感想を書くことは必要だと思います。ただ、普段は何の指導もしていないことが問題なのだと思います。私は感想をたくさん書ける児童を育てたいと思っていますが、なかなか思うようにいきません。

 読書自体が子供たちの中で大きな位置を占めるに至っていません。中には本の虫のような子もいますが(だからと言って文章を書くのが上手だとは限りません)、そのほかの児童が私たちの指導の対象になると思います。まず、本を読むことを楽しめるようにすること。それから感想を表現できるようにすることだと思います。
by しのさんの読書日記 (2011-10-09 21:19) 

しいか

 前々から、しの先生の読書感想文への考え方に共鳴していて、他の先生方もみな同じような考えであればいいのになあと思っていました。

 小学校の先生は忙しいから、なかなか読書指導まで、手がまわらないのでしょうね。
だから、専門の学校司書が必要なのにと考えます。

 読書指導専門の先生がいて、すべての学年に入って指導できるのが理想です。

 でも読書感想文はまた別で、確かに宿題という強制はきついです。

 私は読書感想文書くの、今は好きだけれど、「評価される」「点数をつけられる」という事に抵抗があり、小学生時代は好きではなかったです。

 体育もそう。
運動神経が鈍いので、うまくできないことばかりで、体育は大嫌いでした。
でも、スポーツが嫌いというわけではなくて、大人になって、通信簿につけられないようになったら、スポーツが好きになりました。
by しいか (2011-10-10 00:48) 

しのさんの読書日記

 しいかさんありがとうございます。

 どんなものにしても評価の対象になるのはつらいものだと思います。でも、人が生きていく以上評価はつきものではないでしょうか。

 ただ、すべてに合格点でなくてもいいと思います。それぞれの個性があり、得意不得意があるのが当たり前です。生きていくうえでどうしても必要な基本的なものをそこそこ身に着けていれば、あとはそれぞれの興味関心によってバラエティーがあっていいと思います。

 私も運動は嫌いで、運動会は大嫌いでしたが、それでも小学校の教師を務めています。他の先生方も同じでしょう。すべての教師が同じ方向性を持っているわけではありません。学習指導要領という基準があり、それに従って授業を進めていきますが、せれぞれ重きを置くところが違っていると思います。運動に力を入れる先生もいれば、社会科、理科に力を入れる先生それぞれです。

 そんな中で読書は基礎的な能力の育成にかかわると思うので私は力を入れているのですが、なかなか全体のものにはなりません。文科省が力を入れ始めたので多少は目が向けられるようになりましたがまだまだです。

 そんな状況ですが、これからも読書にかかわって活動していこうと思います。
by しのさんの読書日記 (2011-10-10 08:45) 

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